■ 熊野の観光名所

 み熊野トップ>熊野の観光名所>熊野古道の歩き方

カスタム検索

◆ 熊野古道「大雲取越・小雲取越」(おおくもとりごえ・こくもとりごえ)  和歌山県東牟婁郡那智勝浦町〜熊野川町〜田辺市本宮町


 京都を出発し、船に乗って淀川を下り、現在の大阪市天満橋の辺りで上陸。海岸筋の熊野街道を熊野の玄関口、口熊野といわれた田辺まで南下。
 田辺からは中辺路(なかへち)の山中の道を本宮へ向かう。本宮からは熊野川を船で下り、熊野川河口にある新宮に詣る。新宮からは再び徒歩で海岸線沿いを辿り、それから那智川に沿って那智に登っていく。那智からは再び新宮を経、熊野川を遡行するか、あるいは那智の背後にそびえる妙法山に登り、「大雲取越え・小雲取越え」の険路を越えるかして本宮に戻り、再び中辺路を通って都に帰っていく。
 これが京からの熊野詣の順路でした。往復約600km、およそ1ヶ月かけて歩き、熊野を詣で、京へ帰っていきました。

 ですので、もちろん本宮から那智に向かってもいいですが、那智から本宮に向かうのがかつての「大雲取越え・小雲取越え」の基本です。

熊野那智大社熊野古道

那智へのアクセス
 JR新大阪駅または名古屋駅からJR紀勢本線(きのくに線)特急にて紀伊勝浦駅下車、紀伊勝浦駅から熊野交通バス神社お寺前駐車場行きで約30分、終点下車、徒歩約10分で那智山青岸渡寺の鐘楼横の大雲取越登り口へ。

 熊野古道「大雲取越・小雲取越」沿いの宿泊施設


 那智から本宮へ向かう「大雲取越え、小雲取越え」は西国三十三所観音巡礼のメインルートです。
 西国三十三所観音巡礼が盛んになる以前の中世の文献には唯一、 後鳥羽上皇の4回目の熊野御幸に従った藤原定家が記した『後鳥羽院熊野御幸記』に見られるのみで、中世においては、那智からは新宮へ戻り熊野川を遡行して本宮に戻るというのが通常のルートでした。

 「大雲取越え、小雲取越え」は今は、2日かけて歩くのが一般的ですが、昔の人は1日で歩いたそうで、後鳥羽上皇の熊野御幸にお供した藤原定家も「大雲取越え、小雲取越え」を1日で越え、日記『後鳥羽院熊野御幸記』に、

 終日嶮岨を超す。心中は夢の如し。いまだかくの如きの事に遇わず。雲トリ紫金峰は手を立つるが如し。・・・

 などと記しています。よっぽどしんどかったのでしょうね。(^_^;)

 斎藤茂吉もこの道を歩き、道中記を残しています。

 「大雲取越え、小雲取越え」は、また「死出の山路」とも呼ばれ、そこを歩いていると、亡くなったはずの肉親や知人に出会うといわれています。疲労困ぱいのなか、幻覚を見るのでしょうか。昔は行き倒れになった人も多かったらしいです。ダルという妖怪に取り憑かれたという話も伝えられています。

 紀州が生んだ世界的博物学者南方熊楠(みなかたくまぐす)も雲取を歩いていてダルに取り憑かれたことがあるといいます。

 予、明治三十四年冬より2年半ばかり那智山麓におり、雲取をも歩いたが、いわゆるガキ(※ダルのことです)に付かれたことあり。寒き日など行き労れて急に脳貧血を起こすので、精神茫然として足進まず、一度は仰向けに仆れたが、幸いにも背に負うた大きな植物採集胴乱が枕となったので、岩で頭を砕くを免れた。それより後は里人の教えに随い、必ず握り飯と香の物を携え、その萌しある時は少し食うてその防ぎとした。

 南方熊楠は、同じ文章中に、菊岡沾涼の『本朝俗諺志』という書物からダルに関する話を引用していますので、それを口語訳して紹介します。

 紀伊国熊野に大雲取、小雲取という二つの大山がある。この辺に深い穴が数カ所あり、手頃な石をこの穴に投げ込むと鳴り響いて落ちていく。2、3町(1町は約109m)、行く間、石の転がる音が鳴りつづけているという限りのない穴である。
 その穴に餓鬼穴というのがある。ある旅の僧がこの場所で急に飢餓感に襲われ、一歩も足を動かせないほどになった。ちょうどそのとき、里人がやってくるのに出会い、「この辺で食べ物を求められるところはありますか、ことのほか腹が減って疲れています」というと、里人は「途中の茶屋で何か食べなかったのですか」という。
 「だんごを飽きるまで食べました」と僧はいう。「ならば道の傍らの穴を覗いただろう」と里人。「いかにも覗きました」と僧がいうと、「だからその穴を覗くと必ず飢えを起こすのです。ここから7町ばかり行くと小さな寺があります。油断したら餓死してしまいます。木の葉を口に含んで行きなさい」と里人。
 教えのようにして、かろうじてその寺へ辿り着き、命が助かった、という。

 かくのごとく険しい道ですし(とくに大雲取越えがきつい)、歩き始めたら大雲取を越えきるまで(時間にして約5時間35分)人家はありませんし(小口(こぐち)と小和瀬(こわぜ)に集落がある)、小雲取にしても越えきって請川(うけがわ)に出るまで(約4時間)人家がありませんので、「大雲取越え、小雲取越え」を歩く場合は、2人以上で歩かれることをお勧めします。

 ところで、今の小雲取越えは後世に開かれた道だということで、『続風土記』によると、大雲取山を越え、小雲取を越える(小雲取山という山は具体的にはありませんが)その途中、如法山から東に方向を変え、「番西(ばんぜ)道」という番西峠(現在は万才峠と書く)を越える道を通り、志古(しこ)に出、熊野川沿いに大津荷(おおつが)、請川(うけがわ)を辿るというルートが本道だったそうです。
 定家がお供をした後鳥羽上皇の熊野御幸のルートもこれで、また、西行も、

雲取志古(しこ)の山路はさておきて 小口(をぐち)が原のさびしからぬか

雲取山の志古の山路がさびしいのはさておいて、小口が原がさびしくないことがあろうか。
小口(おぐち)は、大雲取を越えて下りてきたところにある熊野川町の集落「小口(こぐち)」のことだと思われる。小口が原は、小口辺りの河原のことか。

(『山家集』下 雑 977)

 という歌を残していますので、番西道を使って本宮に戻ったようです。

 ◆ 参考文献

観光案内所などに置かれている熊野古道のガイドマップ
宇江敏勝監修『熊野古道を歩く』山と渓谷社
丸山静『熊野考』せりか書房
中沢新一責任編集・解題『南方熊楠コレクション〈第2巻〉南方民俗学』河出文庫 引用箇所は312ページ
新潮日本古典集成49『山家集』新潮社

【熊野古道ガイドブック】をAmazonで探す

  

那智山から本宮へ
大雲取越・小雲取越
コースタイム
1日目=大雲取越
(約16km;約5時間45分)

・那智山バス停
  
(10分)
那智熊野大社
那智山青岸渡寺
  
(2.5km;1時間10分)
・登立茶屋跡
  
(2.0km;40分)
・舟見峠
  
(3.7km;1時間10分)
・地蔵茶屋
  
(1.9km;45分)
・越前峠
  
(4.9km;1時間35分)
・円座石(わろうだいし)
  
(0.8km;15分)
・小口(こぐち)

 小口にて宿泊。
 小口では「小口自然の家」で宿泊できます。

2日目=小雲取越
(約17km;約5時間30分)

・小口
  
(1.0km;20分)
・小和瀬(こわぜ)
  
(2.7km;1時間)
・桜茶屋跡
  
(2.3km;1時間)
・石堂茶屋跡
  
(3.3km;50分)
・松畑茶屋跡
  
(3.7km;1時間10分)
・請川(うけがわ)
  
(1時間)
熊野本宮大社旧社地
  
(0.5km;5分)
・本宮大社前バス停
  
(5分)
熊野本宮大社
  
(0.5km;5分)
・本宮大社前バス停

 請川から熊野本宮大社への約4kmの道のりは国道168号線沿いに歩くことになりますので、バスを利用することもできます。

 熊野本宮大社旧社地にお参りするのを忘れないでくださいね。何もないところですが、ここがもともと本宮のあった場所です。

 本宮町での宿泊については、
本宮の宿泊施設
をご覧ください。

・那智山へは、JR紀伊勝浦駅から熊野交通バス神社お寺前駐車場行きで約30分、那智山神社お寺前バス停下車。
 紀伊勝浦駅や那智駅での那智山へのバスの時刻表については、熊野交通ホームページの「路線図・時刻表」の「路線バス/那智山方面」をご覧ください。

・請川(うけがわ)バス停での熊野本宮大社方面へのバスの時刻表については、熊野交通ホームページの「路線図・時刻表」の「路線バス/湯の峰温泉・本宮方面」をご覧ください。

■「大雲取越・小雲取越」レポートのあるサイト
● 熊野川町「森の家」から

 ◎ 熊野古道 小雲取越・大雲取越
● 我が道を行く!
 ◎熊野古道を歩く 大雲取越え・小雲取越え編

● ようこそ ヒロ のささやかな空間へ
 ◎ 熊野古道4:「山へ時々」のなかにあります。
● 伊萬太千 はやみね
 ◎ 熊野古道 大雲取越・小雲取越
● 熊野那智バリアフリー情報
 ◎ 熊野古道について

● Eco+Wanderer
 ◎ 熊野:「Gallery」の「JAPAN」のなかにあります。
■熊野古道

熊野古道の歩き方
中辺路(滝尻〜本宮)
大雲取越・小雲取越
小辺路(高野山〜本宮)
大辺路(白浜〜那智)
伊勢路(伊勢〜新宮)
プチ熊野古道歩き
中辺路(三軒茶屋〜本宮)
中辺路(伏拝〜本宮)
中辺路(発心門〜本宮)
赤木越(発心門〜湯の峰)
大日越(本宮〜湯の峰)
中辺路(高野坂)
中辺路(大門坂〜那智大社)
中辺路(那智駅〜那智大社)
熊野古道 熊野九十九王子

世界遺産 熊野古道特集 熊野古道の魅力とは【楽天トラベル】

■熊野古道の地図(リンク)

和歌山県側の熊野古道の地図和歌山県の観光情報
三重県側の熊野古道の地図熊野古道

amazonのおすすめ

(てつ)

2003.6.14 更新
2003.6.19 更新
2003.6.24 更新

 


み熊野トップ>熊野の観光名所>熊野古道の歩き方