■ 熊野の歌

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◆ 藤原定家


 藤原 定家(ふじわらのさだいえ、1162年〜1241年)は、鎌倉時代初期の公家、歌人。
 2つの勅撰和歌集『新古今和歌集』『新勅撰和歌集』の選者。家集に『拾遺愚草(しゅういぐそう)』。
 『小倉百人一首』の撰者だといわれます。

 18歳から74歳までの56年にわたる克明な日記『明月記(めいげつき)』は国宝。建仁元年(1201年)に後鳥羽上皇の熊野御幸に随行したときの日記を抄出した『熊野御幸記』も国宝。

 それでは、藤原定家の歌集『拾遺愚草』下巻から熊野関連の歌をご紹介します。訳せなかったものが多く、訳したもののなかでも間違っているものがあると思います。ご教授いただければ嬉しいです。メールフォームはこちら

御熊野詣の御共にまゐりて、哥つかうまつりし中に

本宮、寄社祝

ちはやぶるくまのの宮のなぎの葉を かはらぬ千世のためしにぞをる

(2805)

(訳)熊野の宮の梛の葉を、変わらぬ千代のためしに折る。

 

河千鳥

さ夜千鳥やちよと神やをしふらん きよきかはらにきみいのるなり

(2806)

(訳)清き河原で君が祈るのだ。

 

山家月

み山木のかげよりほかにくまもなし あらしにすてしかりいほの月

(2807)

(訳)深山の木の影の他に影はない。嵐に捨てた

 

新宮

海辺残月

わたつうみもひとつに見ゆるあまのとの あくるもわかずすめる月影

(2808)

(訳)海もひとつに見える  澄んだ月の光。

 

庭上冬菊 

霜おかぬ南のうみのはまびさし ひさしくのこる秋のしらぎく

(2809)

(訳)霜が降りない南の海の浜辺の家の庇。秋の白菊が久しく残っていることだ。

 

暁聞竹風

あけぬるか竹のは風のふしながら まづこのきみのちよぞきこゆる

(2810)

(訳)夜が明けたのか。

 

那智

深山風

風のおともただ世のつねにふかばこそ み山いでてのかたみにもせめ

(2811)

(訳)風の音も

 

瀧間月

やはらぐるひかりそふらしたきのいとの よるとも見えずやどる月かげ

(2812)

(訳)和らげる光が降らした滝の糸。夜とも思えない。月の光が宿って。

 

寺落葉

てらふかきもみぢの色にあとたえて から紅をはらふこがらし

(2813)

(訳)寺、深い紅葉の色 木枯が を払う。

 

本宮にて、又講ぜられ侍し、遠近落葉 

こけむしろみどりにかふるからにしき ひとはのこさぬをちのこがらし

(2814)

(訳)一葉も残さない 木枯。

 

暮聞河波

もろ人の心のそこもにごらじな ゆふべにすめる河波のこゑ

(2815)

(訳)人の心の底も濁るまいよ。夕べに澄んだ川の波の音。

 

道のほどの哥 山路月

袖の霜にかげうちはらふみ山地も まだすゑとほきゆふづくよ哉

(2816)

(訳)袖の霜

 

暁初雪

冬もけさことしの雪をいそぎけり よをこめてたつみねのあけくれ

(2817)

(訳)冬も今日、今年の雪を急いだのだなあ。

 

深山紅葉

み山地はもみぢもふかき心あれや あらしのよそにみゆきまちける

(2818)

(訳)深山は紅葉が深く色づいている。嵐にも深い心があるのだろうか。深山の紅葉が御幸を待っていることだ。

 

海辺冬月

くもりなきはまのまさごにきみがよの かずさへ見ゆる冬の月かげ

(2819)

(訳)曇ることなく澄んだ冬の月の光。その光に照らされてはっきりと見えている(吹上浜の)細かな砂(の粒の数の多さ)に、あなた様の齢〔よわい〕の数までもが見えるようです。(後鳥羽上皇様、どうかお健やかにご長寿でお過ごしくださいませ。)

※ この歌の口語訳については、もりのうさぎさんにご教授いただきました。ありがとうございます。

 

河辺落葉

そめし秋おくれぬとたれかいはた河 またなみこゆる山ひめのそで

(2820)

(訳)誰かいったのだろうか。

 

旅宿冬月 

いは浪のひびきはいそぐたびのいほを しづかにすぐる冬の月かげ

(2821)

(訳)岩波の響きは急ぐ旅の

 

羇中霰

冬の日をあられふりはへあさたてば 浪に浪こすさのの松風

(2822)

(訳)波に波越す佐野の松風。

 

夕神楽

神がきやけふのそらさへゆふかけて みむろの山のさか木はのこゑ

(2823)

(訳)山の榊の葉の音。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

(てつ)

2009.2.24 UP

 ◆ 参考サイト・参考文献

藤原定家の著作と平安朝古典籍の書写校勘に関する総合データベース

『本宮町史 文化財篇・古代中世史料篇』

 

 

■熊野懐紙
1.遠山落葉、海辺晩望
2.山河水鳥、旅宿埋火
3.山路眺望、暮里神楽
4.古谿冬朝、寒夜待春
5.行路氷、暮炭竈
6.深山紅葉、海辺冬月
7.峯月照松、浜月似雪

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