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◆ 中沢新一『アースダイバー』講談社


レビュアー:てつ(2005.9.14 UP)

 縄文海進期の東京の地図を携えての東京散策。
 縄文海進期に岬であった場所には、神社や寺院があり、縄文や弥生の集落跡があり、古墳や墓地がある。

 海に突き出た岬のような地形に、縄文時代の人々は強い霊性を感じた、というのはわかる気がする。
 熊野三山のそれぞれの古宮とされる場所はいずれも突き出た場所であり、現代人である僕にもそこが聖地であることが直感的にわかる 。
 本宮の古宮大斎原(おおゆのはら)は川面から突き出た森であり、新宮の古宮とされる神倉神社は天に向かって突き出たゴトビキ岩をご神体とし、那智の古宮のご神体の那智の滝は下から仰げば天に向かって突き出た水の流れである。

 人間の世界の外にある不思議な領域から、その境界を突き出て何か重大な意味や価値をもつものが現われてくる、と人間は考えた。
 死霊や神々の世界から人間世界に突き出た部分。そこで価値が生じる。

 逆に考えれば、こちらの世界の突き出た部分は、こちらの世界から死霊や神々の世界への通路の入り口といえる。
 突き出たもの。さきっぽ 。先端部分。 突き出ているということが重要なのだ。
 神社というのは、その場所そのものが重要なのだと思う。

 本書のなかで、新宿の起源伝説が語られる。かつて原野であった新宿の地を開いたのは、室町時代に紀州藤代からこの地に移住してきた熊野神社の神官の家系であった鈴木九郎という人物であった。この人物が新宿を開き、新宿に十二社熊野神社を建てた。
 この鈴木九郎の新宿の起源伝説はとても興味深い(詳しくは熊野の説話の「新宿起源伝説」で紹介しているのでこちらを参照ください)。

 その他、熊野に関連することで、いくつか興味深いことが書いてある。

 近代の天皇は森のなかに住まう。皇居そのものが森のなかにつくられたことはかつてなかった。
 歴代天皇たちは、平地に開かれた皇居に暮らしていた。が、ときどき、深い森のなかに身を潜めた。吉野や熊野の森に出かけて、森のなかに何日間も籠ってしまうのだ。森の奥に籠って野生の森の放つ霊威を身につけようとしたのだ。
 ところが、近代天皇は日常的に森のなかに身を潜めるようになった。

 温泉につかるという行為は大地の奥の燃え盛る火のエネルギーを受け取るということ。野生の大地の放つ霊威を身につけること。
 したがって昔の貴族たちは勝手に熊野などの温泉に行くことはできなかった。ひそかに温泉につかった場合、それは政治的反逆の準備という意味をもちかねなかった。 誤解されることなく温泉に行くためには天皇の許可が必要とされた。

 現在、東京タワーが建っている芝という場所は、熊野と海の通路でつながっており、熊野からの鈴木姓をもった移住者が多く住んだ。だから今でも鈴木姓の家が多い。

 熊野に関連しない部分でもとてもおもしろく読めました。中沢新一さんならではのユニークな東京論となっています。

 都市のど真ん中に森があるというのが東京の素晴らしいところですね。やっぱり。

 (てつ)

 

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