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★ 熊野古道とは?


熊野古道

熊野古道熊野古道

 熊野古道とは、熊野と各地を結ぶ熊野詣の道の総称です。「熊野道」「熊野街道」「熊野参詣道」などとも呼ばれます。
 熊野詣の道にはいくつかのルートがありますが、そのなかで大阪と熊野を結ぶ紀伊路(きいじ。紀路(きじ)とも)、伊勢と熊野を結ぶ伊勢路(いせじ)の二つの道が古くはポピュラーなルートであったようです。
 後白河上皇撰述の歌謡集『梁塵秘抄』に載せられている今様(いまよう。当時の流行歌)に次のようなものがあります。

熊野へ参るには
紀路と伊勢路のどれ近し どれ遠し
広大慈悲の道なれば
紀路も伊勢路も遠からず

 熊野古道には、紀伊路と伊勢路の他に、高野山から南下して伯母子岳や果無(はてなし)山脈を越えて本宮に至る小辺路(こへち。果無街道ともいう)や吉野から大峰山脈を縦走する行者道を行く大峰奥駈け道がありました(下の地図を参照ください)。
 地図には描きませんでしたが、吉野から北山川の河谷を南下する北山街道、五条から天辻峠を越えて十津川を下る十津川街道というルートなどもありました。

熊野古道

  • 中辺路(田辺〜熊野本宮-新宮-那智)
  • 小辺路(高野山〜熊野本宮、約70km)
  • 大辺路(田辺〜那智の浜、約120km)
  • 伊勢路(伊勢神宮〜熊野新宮、約160km)
  • 大峯奥駈道(吉野〜熊野本宮、約140km)
  • 熊野古道 中辺路

     さて、「広大慈悲の道なれば紀路も伊勢路も遠からず」と歌われた紀伊路と伊勢路ですが、平安時代の末から、上皇・女院・貴族、あるいは武士たちが熊野を詣でるのに紀伊路の中辺路(なかへち。紀伊路は熊野の玄関口・田辺で二つに別れます。海岸をたどる大辺路(おおへち)と、山中を東に分け入る中辺路です)を利用するようになり、紀伊路の中辺路が熊野詣の公式ルートとなりました。

     そこで、熊野古道を代表して、紀伊路の中辺路ルートのことを少々説明したいと思います。

     京から熊野までは、紀伊路の中辺路を利用すると、往復約1ヶ月、距離にして往復約600kmの道のりです。
     先にも挙げた『梁塵秘抄』に、

    熊野へ参らむと思へども
    徒歩
    (かち)より参れば道遠し すぐれて山きびし
    馬にて参れば苦行ならず
    空より参らむ 羽賜
    (た)べ 若王子

     という今様があるように、辺境の山岳地帯にある熊野へ詣でることは都人にとってまさしく苦行の旅であって、苦しみながら詣でるからこそ、熊野の神様の御利益があるのだとされました。そのため、徒歩で行くことが原則とされました(往路に関しては。復路に関しては馬などを利用することも可で、淀川と熊野川の往復は船を利用するのが一般的でした)。

     京都を出発した上皇や貴族たちは、船に乗って淀川を下り、現在の大阪市天満橋の辺りで上陸しました。そこからが熊野古道紀伊路の始まりです。天満橋から海岸筋を通り、熊野の玄関口、口熊野といわれた田辺まで南下。田辺からは中辺路の山中の道を本宮へ向かう。本宮からは熊野川を船で下り、熊野川河口にある新宮に詣る。新宮からは再び徒歩で海岸線沿いを辿り、それから那智川に沿って那智に登っていく。那智からの帰途は、再び新宮を経、熊野川を遡行するか、あるいは那智の背後にそびえる妙法山に登り、大雲取越え・小雲取越えの険路を越えるかして本宮に戻り、再び中辺路を通って都に帰っていく。これが紀路・中辺路ルートです。

     もうひとつの紀路、大辺路は、海岸沿いに海を見ながら行く風光明美な道だったようです。難点は距離が長く、時間がかかるということ。風景を楽しみながらのんびり行くことができる人が利用したようです。

     さて、熊野詣の公式ルートである紀路・中辺路ですが、その道筋には、所々に王子と呼ばれる神祠が祀られています。
     王子とは、よくはわかりませんが、熊野権現の分身として現れた御子神のことだと考えればよいと思います。

     道中最初の王子「窪津王子」は、紀伊路の出発点、淀川河口付近、大阪市天満橋の辺りにあります。そこから片道300kmに及ぶ紀路・中辺路の道中、熊野三山に至るまで多くの王子が祀られています。その数は、現在、確認されているもので、およそ100。
     それらの王子をまとめて「熊野九十九王子」と呼んでいます。九十九という数字は実際の数ではなく、大変多いという意味で使われていますが、だいたい近い数になっています。この数多い王子のひとつひとつで奉幣や経供養などが行われました。

     大辺路や伊勢路、小辺路などには現われず、紀路・中辺路に集中的に現われた王子。出現時期も大半が12世紀の院政期。紀路・中辺路の多数の王子は、院政期の熊野詣が生み出した産物といえるでしょう。

    祈りの道 熊野古道

     熊野古道とは、中世、日本最大の霊場であった熊野へと続く信仰の道。
     熊野はあらゆる人々を受け入れる聖地であったがため、日本中のあらゆる階層の人々がこの道を歩きました。
     「蟻の熊野詣」と、蟻が餌と巣の間を行列を作って行き来する様にたとえられるほどに、大勢の人々が列をなして、この道を熊野を目指して歩きました。
     上皇や女院や貴族が歩き、武士や庶民も歩き、盲人やハンセン病者など社会の底辺に生きる人々も極楽往生や現世利益や治癒の奇跡を求めて歩きました。
     さまざまな人々がさまざまな思いを抱いて、さまざまな願いをこめて歩いた祈りの道。それが熊野古道なのです。

    熊野古道のすごさ

     熊野古道のすごさは、異なる宗教の聖地を参詣道がつないでいること。修験道の吉野、真言密教の高野山、神道の伊勢、そして同じ神道とはいってもまるで違う熊野。これは世界的にはほとんどあり得ないことだと思います。

     神と仏が敵対するのではなく、融合し、共存している。異なる宗教が敵対せずに共生している。この共生の文化こそが世界に誇るべき日本の文化遺産なのだと私は思います。

    熊野古道の歩き方

    (てつ)

    2002.12.28 UP

     ◆ 参考文献

    くまの文庫4『熊野中辺路 古道と王子社』熊野中辺路刊行会
    宇江敏勝監『熊野古道を歩く』山と渓谷社
    小山靖憲『熊野古道』岩波新書
    神坂次郎 監修『熊野古道を歩く―熊野詣』講談社カルチャーブックス

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    熊野古道の歩き方
    中辺路(滝尻〜本宮)
    大雲取越・小雲取越
    小辺路(高野山〜本宮)
    大辺路(白浜〜那智)
    伊勢路(伊勢〜新宮)
    プチ熊野古道歩き
    中辺路(三軒茶屋〜本宮)
    中辺路(伏拝〜本宮)
    中辺路(発心門〜本宮)
    赤木越(発心門〜湯の峰)
    大日越(本宮〜湯の峰)
    中辺路(高野坂)
    中辺路(大門坂〜那智大社)
    中辺路(那智駅〜那智大社)
    熊野古道ルートマップ

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    熊野九十九王子
     熊野九十九王子を出発点から順に並べていくと以下のようになります。

    1.窪津王子
    2.坂口王子
    3.郡戸王子
    4.上野王子
    5.阿倍王子
    6.津守王子
     (以上、大阪市)
    7.堺王子
    8.大鳥新王子
     (以上、堺市)
    9.篠田王子
    10. 平松王子
    11. 井ノ口王子
     (以上、和泉市)
    12. 池田王子
     (岸和田市)
    13. 麻生川王子
    14. 近木王子
    15. 鞍持王子
     (以上、貝塚市)
    16. 鶴原王子
    17. 佐野王子
    18. 樫井王子
     (以上、泉佐野市)
    19. 厩戸王子
    20. 信達一ノ瀬王子
    21. 長岡王子
     (以上、泉南市)
    22. 地蔵堂王子
    23. 馬目王子
     (以上、阪南市)

    ここまで大阪府。次から和歌山県に入ります。

    24. 中山王子
    25. 山口王子
    26. 川辺王子
    27. 中村王子
    28. 吐前(吐崎)王子
    29. 川端王子
    30. 和佐王子
    31. 平緒王子
    32. 奈久知王子
     (以上、和歌山市)
    33. 松坂王子
    34. 松代王子
    35. 菩提房王子
    36. 藤代王子
     (以上、海南市)
    37. 藤白塔下王子
    38. 橘本王子
    39. 所坂王子
    40. 一壷王子
     (以上、下津町)
    41. 蕪坂塔下王子
    42. 山口王子
    43. 糸我王子
     (以上、有田町)
    44. 逆川王子
    45. 久米崎王子
     (以上、湯浅町)
    46. 津兼(井関)王子
    47. 河瀬王子
    48. 東の馬留王子
     (以上、広川町)
    49. 沓掛王子
    50. 西の馬留王子
    51. 内ノ畑王子
    52. 高家王子
    53. 小中王子
    54. 比井王子
     (以上、日高町)
    55. 松原王子
     (美浜町)
    56. 善童子王子
    57. 愛徳山王子
    58. 九海士王子
    59. 岩内王子
    60. 塩屋王子
    61. 上野王子
     (以上、御坊市)
    62. 津井(叶)王子
    63. 斑鳩(富の川)王子
    64. 切目王子
    65. 切目中山王子
     (以上、印南町)
    66. 岩代王子
    67. 千里王子
    68. 三鍋王子
     (以上、南部町)

    次からいよいよ口熊野。70の出立王子から中辺路に入ります。

    69. 芳養王子
    70. 出立王子
    71. 秋津王子
    72. 万呂王子
    73. 三栖王子
     (以上、田辺市)
    74. 八上王子
    75. 稲葉根王子
    76. 一ノ瀬王子
     (以上、上富田町)
    77. 鮎川王子
     (大塔村)
    78. 滝尻王子
    79. 不寝王子
    80. 大門王子
    81. 十丈王子
    82. 大坂本王子
    83. 近露王子
    84. 比曽原王子
    85. 継桜王子
    86. 中ノ河王子
    87. 小広王子
    88. 熊瀬川王子
    89. 岩神王子
    90. 湯川王子
     (以上、中辺路町)

    次から奥熊野。

    91. 猪鼻王子
    92. 発心門王子
    93. 水呑王子
    94. 伏拝王子
    95. 祓戸王子
    96. 湯ノ峯王子
     (以上、本宮町)

    本宮を詣でた後は熊野川を船で下って新宮へ。新宮からは再び徒歩で那智へ。

    97. 浜王子
    98. 佐野王子
     (以上、新宮市)
    99. 浜の宮王子
    100. 市野々王子
    101. 多富気王子
     (以上、那智勝浦町)

    以上で那智へ到着。王子もお仕舞いです。

    ※九十九王子中、とくに格式が高いとして崇敬されてきた王子を「五体王子」といいますが、五体王子については赤い数字で記しました。

     


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