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◆ 紀伊山地・高野・熊野参詣の道 世界遺産登録を祝う夕べ (2004.9.18)


 9月18日土曜日、和歌山県の印南町で「紀伊山地・高野・熊野参詣の道 世界遺産登録を祝う夕べ」が開催されました。印南町には熊野古道の王子社のうち切目王子(五体王子のひとつ)、叶王子、斑鳩王子、中山王子があり、そのうち切目王子社ゆかりの御神楽といわれる「鞨鼓・切目」が島根県・石見地方の御神楽に伝承されており、昨年は「石見神楽の夕べ」として益田市の高津社中の方々によって公演され、今年は世界遺産登録記念として石見地方・浜田市の西村社中の方々によって公演されました。こちらは日中、切目王子での公演の様子です。 

 始めの演目は「鞨鼓(かっこ)」。
「余り事むつかしき大御神にて、高ければ高いとおっしゃる、低ければ低いとおっしゃる、高き低きの真ん中処に今一度据替えたく、尚々伶人たち、はやしなさるべく候。」
(音声はこちら。)
と、高天原から熊野の音無川に下った羯鼓(小太鼓)を丁度良い位置に据え置くべく、神禰宜(かんねぎ)役の演者が踊ります。動画はこちら。3MBあります。
 次の演目は「切目(きりめ)」。出掛歌は

「熊野なる切目の王子の竹柏(なぎ)の葉は 髪挿(かざ)しに挿いて御座へ参ろや」

「熊野路はものうき旅と思うらん 千歳の川で思い知らせむ」

梁塵秘抄「熊野に出でて 切目の山の梛の葉し 万(よろづ)の人のうはきなりけり」という歌があるように、熊野詣の帰路に切目王子の御神木の梛の木の葉を取り、笠の飾りにした風習があったのだそうです。そして歌の後、切目の神と社人とが神と陰陽五行説について問答します。


歌やセリフからも深く熊野参詣に関わる演目であることがよくわかります。

切目神社社殿前・介添の舞いです(写真をクリックすると大きくなります)。切目と介添が共に舞う途中には木漏れ日のさす境内に初秋の落ち葉が舞い、えもいわれぬ美しさでした。800年前の熊野参詣の上皇たちも、同じ場所でこの御神楽を見ていたのでしょうか。時代がタイムスリップしたような感覚でした。動画はこちら。5.7MBあります。

さてこちらは公演夜の部、印南町体育館にて西村社中の方々です。世界遺産登録記念イベント「紀伊山地・高野・熊野参詣の道 世界遺産登録を祝う夕べ」開幕前、準備中の楽屋におじゃまさせていただきました。演目の舞えるギリギリのメンバーで公演をされたそうで、今日いらしているのは17名の方なのだそうです。お若い方が多いなあと言う印象でした。皆様、お忙しい中すみません。取材御協力くださってたいへんありがとうございました。

午後7時、いよいよ開幕です。初めに主催の方々の御挨拶の後、後鳥羽上皇の姿になった印南町教育長さんによる切目懐紙の歌の紹介や、平安調の熊野参詣の女性の姿をした人や、印南町の四王子にちなんだ鬼が登場し、その後は印南町文化協会有志と印南町小学生有志による歓迎の踊り「印南エジャナイカ・ホンマヤデ」が披露されました。こちらは踊りが終わって全員集合の様子です(写真をクリックすると大きくなります)。
さていよいよ石見神楽の登場です。初めは昼に続き再び「鞨鼓」の上演です。厚く重みのある装束でたいへん激しい踊りをされるので、演じられる方はさぞ暑かったことと思います。
次に「切目」です。介添と切目が問答します。

切目「さて、其の垂迹は。」
介添「事解男、速玉の男、伊那諾の神社。」
切目「無念の鼓は。」
介添「父母(ぶも)の声。」
切目「鞨鼓太鼓は。」
介添「幼兒(うぶ)の声。」
切目「みな神風の源は。」
介添「重波よする伊勢の宮。古歌に曰く、片そぎの千木は内外(うちと)に変れども誓いは同じ伊勢の神風。」


音声はこちら。348KBです。石見神楽では「鞨鼓・切目」はセットで演じられるようです。
次に「塵輪(じんりん)」です。こちらは昨年の「石見神楽の夕べ」にはなかった演目です。仲哀天皇の頃に異国から攻めて来た「塵輪」。この悪鬼に向かって神と高麻呂が弓矢を持って戦います(写真をクリックすると大きくなります)。

開演前に受付後方に塵輪の装束があり、スタッフの方が「着てみますか?」と言ってくださったのではおってみました。ずっしり重く、花嫁の白無垢より重いようなかんじでした。
激しく回転する戦いの舞いの後、弓矢によって塵輪たちは倒れます。たいへん勇壮な、戦いの舞いでした。動画はこちら。2.8MBあります。 さてこちらは一転してにこやかな面の「恵比須」さん。こちらも昨年はなかった演目です。会場にお菓子を撒いたり(動画はこちら。1.2MBあります)、軽快な仕種で鯛を釣ったり、晴れやかな空気の舞台でした。餅まき大好きな和歌山の子供達、我先にとお菓子をGETしていました。(私も1個、GET!!)

いよいよ石見神楽のラスト「大蛇(おろち)」です!!昨年は4頭のおろち、今年は6頭のおろちが登場しました。並んで鎌首をもたげた大蛇達に、会場は拍手喝采!(写真をクリックすると大きくなります。動画はこちら。1.2MBあります。)

じつは開演前に「塵輪」の装束をはおった後、大蛇の頭もかぶらせてくださったのですが、口の所から外が見えるようになっているんですね。かぶったところはこちら。かたくて(木でできているのでしょうか)、かぶっていると獅子舞に頭を噛まれた時のような感触でした。

※社中の方によりますと、大蛇の頭は和紙でできているのだそうです。KAOさん有り難うございました。※
スサノオノミコト(熊野本宮大社の御祭神でもあります)により大蛇は退治され、クシナダヒメも無事救出されました。(動画はこちら。2.5MBあります。)今回は姫の両親である足名椎(あしなづち)・手名椎(てなづち)も杖で戦っていました。神楽団によっていろいろな演じ方があるのですね。

とても楽しみだった石見神楽が再び熊野で拝見でき、感無量です。熊野が世界遺産に登録されるその価値を内包している世界遺産記念イベントというのは実はそんなに数がないように思えていた昨今、熊野信仰が全国展開していった軌跡を辿ることのできるたいへん意義深い公演を拝見させていただきました。またぜひ機会がありましたら再度公演が実現されますように!

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印南町文化協会会長様、西村社中の皆様、取材御協力たいへんありがとうございました。
西村社中の皆様のHPはこちらhttp://www.geocities.jp/nishikagu/
公演の様子も動画配信されています。


参考文献:「日本の美を舞う 石見神楽」(矢富巌夫著・石見神楽高津社中刊)

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