■ 熊野の説話 |
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◆ 弘法大師伝説 in 熊野 |
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全国各地に数多くの伝説を残す弘法大師・空海(774〜835)。ここ熊野の地にももちろん多くの伝説が。 本宮町の大瀬(おおぜ)という集落にはこんなお話が。 昔、大瀬の山上の馬頭観音の傍らにある家のおばあさんのところに弘法大師がやってきて、一晩の宿を所望した。おばあさんは食べさせるものがなかったため、やむを得ず、種にとっていたソバ種3合を臼でひいて食べさせた。大師は感謝して、「そのソバ殻をその辺りに放っておけば自然にソバが生えてくるようになる」とおばあさんに教えた。おばあさんは不思議なことを言う坊さんだと思ったが、言われた通りにしてみるとソバが生えてきたという。それ以後、毎年、種を蒔かなくても、自然にソバが生えてくるようになった。 大瀬の馬頭観音の境内には蕎麦大師が祭られています。 実相寺の近くにオカメというおばあさんが住んでいた。そこへ弘法大師が訪れ、昼食を食べようとしてお茶を所望した。おばあさんにお茶をもらうと、大師は昼食をとった。食事には榊(サカキ)の箸を使ったが、食事が終わると、その箸を地面に突き立て、「これが大きく成長した折には、この村には天然痘が一切ないようにしてやろう」とおばあさんに約束して立ち去った。榊の箸は根付き、成長し、それ以後、村には天然痘がおこらなくなったという。 また、大塔山という本宮町の山の麓の林道脇に「弘法杉」と呼ばれる2本の杉の巨木がありますが、その杉は、弘法大師が杉の箸を地面に突き立てたところ、根付いて育ったものなのだそうです。
この2本の杉の巨木は、全国・国有林の巨樹・巨木百選に選ばれています。 育つはずのないものが育つという奇跡を起こす弘法大師。 秋に「ガシャガシャ」と大きな声で鳴くクツワムシ。本宮町桧葉(ひば)では鳴かないそうです。 昔、弘法大師が桧葉で勉強していたところ、クツワムシが「ガシャガシャ」と鳴いてあまりにやかましい。そこで、大師はクツワムシに「黙っておれ」と言い、それ以後、桧葉ではクツワムシは鳴かなくなったとか。 これは『本宮つれづれ』のまことさんに教えていただいたお話ですが、まことさんによると、本当に全然「ガシャガシャ」という鳴き声を耳にしないそうです。 弘法大師のお話に戻って、熊野川町志古(しこ)では、 弘法大師が志古のある家に来たとき、ちょうどその家ではモチ米を蒸していた。そこで、大師は餅を所望したが、家の者は「これは餅ではなく粥だ」と嘘をついて餅を与えなかった。それ以後、志古では、いくら餅をついても固まらなくなってしまった。それで、餅をつかなくなったという。 西牟婁郡上富田町朝来(あっそ)では、 大師にエンドウ豆の喜捨を乞われたが、一粒も与えなかったので、その罰としてエンドウ豆を作ると、サヤに穴もないのに必ず虫が入るようになったという。そのため、エンドウ豆を作らなくなった。 弘法大師空海。 そうした様々な空海の顔のなかで、とくに庶民に親しまれてきたのが、土木技術者としての空海でしょう。 空海は、この工事で、堤防をアーチ型に設計しました。アーチ型にすると、水圧が分散され、直線のものよりはるかに高い水圧に耐えられるようになるそうです。 西牟婁郡上富田町朝来(あっそ)には、こんな伝説が。 昔、弘法大師が熊野詣の途上、咽が乾き、村びとに水を所望したところ、村びとは遠くまで汲みに行って与えた。それを感謝した大師は「この土地は水に不自由のようだから、水の便をはかってやろう」と祈祷を始めた。すると、乾いた土地から清水が湧き出てきたという。 いわゆる「弘法井戸」の伝説です。 また、西牟婁郡串本町の海岸に林立する奇岩群、国の名勝・天然記念物に指定されている橋杭岩にはこんな伝説が。 弘法大師と天の邪鬼とが一晩で大島まで橋を架ける競争をしたが、負けそうになった天邪鬼が鶏の鳴きまねをして夜が明けたと思わせたため、弘法大師が作業を止め、橋を完成させることなく杭だけで終わったという。
やはりこれも空海の土木技術者としての実力が生み出した伝説のようです。 さて、取りあえず、この辺で、「弘法大師の伝説」の項を終えますが、まだまだたくさんの弘法伝説がこの熊野地方にもあると思われます。熊野と高野山とは熊野古道・小辺路(こへち)で結ばれていますし。 Eさんから弘法伝説に関するメールいただきました。以下Eさんのメールより。 ◎ 音無川 弘法大師が奥吉野(十津川あたり?)を歩いていたところ、せせらぎの音があまりにうるさい川があったので水面に石を投げると川が静まり、それ以来その川は音無川と呼ばれるようになったそうな。 ◎ 妙法山阿弥陀寺 弘法大師は高野山開創の前年(815年)、那智の地を訪れ、那智の滝で行をし、妙法山の山頂に卒塔婆を立てたといいます。さらに阿弥陀如来像を彫られたとも。 ◎ このほか、和歌山県内の熊野古道には「弘法の井戸」(湯浅町)「弘法の爪書き地蔵」(有田市)などおびただしい数の伝説が残っています。 Eさん、メール、ありがとうございます。 (てつ) 2000.9 UP ◆ 参考文献
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