熊野古道を歩く
熊野古道とは、日本の宗教の中心地であった熊野へと続く信仰の道。
世界で2つしかない「道」の世界遺産。人類の遺産、世界の宝である道。
熊野はあらゆる人々を受け入れる聖地であったがため、日本中のあらゆる階層の人々がこの道を歩きました。「蟻の熊野詣」と、蟻が餌と巣の間を行列を作って行き来する様にたとえられるほどに、大勢の人々が列をなして、この道を熊野を目指して歩きました。
上皇や女院や貴族が歩き、武士や庶民も歩き、盲人やハンセン病者など社会の底辺に生きる人々も極楽往生や現世利益や治癒の奇跡を求めて歩きました。さまざまな人々がさまざまな思いを抱いて、さまざまな願いをこめて歩いた祈りの道。それが熊野古道なのです。
宗教の共生
熊野古道のすごさは、異なる宗教の聖地を参詣道がつないでいること。
高野山と熊野を結ぶ小辺路。仏教真言密教の聖地、高野山と熊野が参詣の道で結ばれています。
吉野と熊野を結ぶ大峰奥駈道。修験道の聖地、吉野と熊野が山伏の修行の道で結ばれています。
伊勢と熊野を結ぶ伊勢路。同じ神道とは言ってもまるで違う伊勢と熊野も参詣の道で結ばれています。
神と仏が敵対するのではなく、融合し、共存している。異なる宗教が敵対せずに共生している。この共生の文化こそが世界に誇るべき日本の文化遺産なのだと私は思います。
イスラム教の聖地とキリスト教の聖地を結ぶ巡礼の道なんてあり得ないですし、同じキリスト教の中でもプロテスタントの教会とカトリックの聖地を結ぶ巡礼の道というのもあり得ないです。
世界的にはあり得ない奇跡的なことが日本では起こった。その奇跡を体感できる場所が熊野古道です。
熊野古道は文化遺産
熊野古道は世界文化遺産。自然遺産ではありません。
何も熊野のことを知らなければ、世界遺産の熊野古道も何ということもない単なる山道にしか感じられないかもしれません。
熊野への思い入れが熊野古道歩きの体験を豊かなものにしてくれるものと思いますので、こちらにお越しになる前に少し熊野のことを知っていただけたらと思います。