熊野の神使、大烏
八咫烏は熊野の神々の使いとされるカラスです。
八咫烏の「咫」は長さの単位(手を開いたときの中指の先から親指の先までの長さ)です。
それ1字では「あた」と読み、「八咫(やあた→やた)」では「大きな」という意味になります。
八咫烏とは字義的には大きなカラスということで、『古事記』の序では「大烏」と書かれています。
絵としては3本の足を持つカラスとして描かれますが、それは中国や朝鮮半島の三足烏の影響を受けてのものだと考えられます。
熊野の神々の来歴を語る「熊野の本地」では、熊野の神々の最初の祀り手である猟師は、狩りの途中に山中迷って困っていたところを八咫烏に導かれて、初めて熊野の神々に遭遇したと記されています。
『古事記』や『日本書紀』の神武東征説話では、カムヤマトイワレビコ(のちの神武天皇)が東征の途上、天から遣わされた八咫烏の道案内により熊野・吉野の山中を行軍したと語られます。
また、熊野の牛玉宝印(ごおうほういん。神社や寺院が発行するお札、厄除けの護符)はカラス文字で図案化されており、そのため、熊野の牛王宝印は俗に「おカラスさん」とも呼ばれます。
八咫烏について詳しくは「熊野の説話/神武東征、ヤタガラスの導き」をご覧ください。
(てつ)
2008.3.19 UP
参考文献
- 加藤隆久 編『熊野三山信仰事典』神仏信仰事典シリーズ(5) 戎光祥出版