■ 熊野の説話 |
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◆ 火に焼けなかった法華経 |
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平安時代初期の薬師寺の僧、景戒(けいかい)が著した日本最古の仏教説話集『日本霊異記』に、牟婁の沙弥(むろのしゃみ)という自度僧(じどそう。官の許可を得ずに勝手に僧となった者のこと)が登場する説話があります(下巻第十)。 如法に写し奉る法華経が火に焼けぬ縁 牟婁の沙弥は榎本氏である。自度僧であるため、僧名はない。紀伊国牟婁郡の人であるため、あだ名を牟婁の沙弥と名づける。安諦郡荒田村(和歌山県有田郡実原村)に居住し、ひげや髪を剃り落とし、袈裟を付け、俗人の生活をして家計を立て、世渡りのために生業を営んでいる。 写経する法に従って心身を清浄にして法華経一部を写し奉ろうと発願し、もっぱら自分で書写する。大小便の度ごとに水を浴びて身を清め、書写の座に着いて以来、六か月を経て、清書し終わった。供養の後、漆を塗った皮の箱に入れて、外の所には置かず、居室の軒端に置いて、時々読む。 神護景雲三年(769)の夏、五月二十三日の正午に家全体がことごとく焼亡した。ただその経を納めた箱だけが燃えさかる火の中にあってまったく焼け損じた所がない。 河東(黄河の東、魏の地)の修行を積んだ尼が写した法華経の功徳(『冥報記』に「尼の写した法華経を他の僧が読もうとしたが字が消えていた。しかし、尼が修法して開いたら元のように字があった」という話がある)がここに現われ、陳のときの王与女が経を読んで火難から免れた力(出典不明)が再び示されたのだということがよくわかった。 誉め讃えていう。 牟婁の沙弥の姓は榎本。 (てつ) 2005.8.10 UP ◆ 参考文献
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