■ 熊野の説話

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◆ 山の箸


 昔は、山に弁当を持って出かけるときに箸を持っていかなかったそうです。だから、弁当を食べるときには、山の木で箸を作っていました。どんな木で作ってもよかったかというとそうではなくて、

● 柿の木やウツギの木では作るな。柿やウツギの木の箸は仏様の箸だから。

● エンジュの木で作った箸で食べると、中風にならない。

 とか、しきたりのようなものがあったそうです。

 また、山で使った箸をそのまま捨ててしまうのはタブーでした。食べ終わったら、必ず箸をまっ二つに折ってから置いてくる(集落によっては2ケ所で折って、〔 のようにするところも)。
 そのまま置いてきてはいけない理由は、大別して3つ。

● 捨てた箸を「ダル」がなめると、その人に「ダル」が憑きやすくなるからいけない。

※「ダル」とは、「ダリ」あるいは「ヒダル」ともいわれる悪霊の一種。これに取り憑かれると、急にだるくなって、歩くこともできなくなります。

● 狼が来て、箸を噛むと悪いことが起こるからいけない(狼をおどすために折る。くの字に折れた箸を狼が見て、自分より大きな口のものがいると思って逃げていく)。 

● 鳩が箸をくわえていって巣を作るからいけない(鳩は棒を2本横にしてその下に巣を作るものであるとされ、その格好が棺桶を担ぐときの様子にそっくりで不吉だから)。

 鳩の巣は見るものではないといわれていたそうですが・・・
 いずれにしても不思議な風習だと思います。

 

 2013.4.7追記
 なぜ昔は山に弁当を持っていくときに箸を持っていってはならなかったのか。『松原右樹遺稿 熊野の神々の風景』を読んで納得がいきました。「箸はさまざまな霊の宿る小さな柱である」(25頁)。
 山に箸を持っていかなかったのは、邪悪な精霊が箸に依り憑くのを防ぐためだったのです。

(てつ)

2013.4.7 更新

 ◆ 参考文献

近畿民俗学会『熊野の民俗-和歌山県本宮町-』初芝文庫
松原右樹遺稿 熊野の神々の風景』松原右樹遺稿刊行会

 

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