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藤原定家

藤原定家が詠んだ熊野関連の歌

 藤原定家(ふじわらのさだいえ、1162年~1241年)は、鎌倉時代初期の公家、歌人。
 2つの勅撰和歌集『新古今和歌集』『新勅撰和歌集』の選者。家集に『拾遺愚草(しゅういぐそう)』。
 『小倉百人一首』の撰者だといわれます。

 18歳から74歳までの56年にわたる克明な日記『明月記(めいげつき)』は国宝。建仁元年(1201年)に後鳥羽上皇の熊野御幸に随行したときの日記を抄出した『熊野御幸記』も国宝。

 それでは、藤原定家の歌集『拾遺愚草』下巻から熊野関連の歌をご紹介します。訳せなかったものが多く、訳したもののなかでも間違っているものがあると思います。ご教示いただければ嬉しいです。

『拾遺愚草』2805-2823

2805

   御熊野詣の御共にまゐりて、哥つかうまつりし中に

   本宮、寄社祝

ちはやぶるくまのの宮のなぎの葉を かはらぬ千世のためしにぞをる (2805)

 (訳)熊野の宮の梛の葉を、変わらぬ千代のためしに折る。

2806

   河千鳥

さ夜千鳥やちよと神やをしふらん きよきかはらにきみいのるなり (2806)

(訳)清き河原で君が祈るのだ。

2807

   山家月

み山木のかげよりほかにくまもなし あらしにすてしかりいほの月 (2807)

(訳)み山の木の陰の他に陰りもない。嵐に?

2808

   新宮

   海辺残月

わたつうみもひとつに見ゆるあまのとの あくるもわかずすめる月影 (2808)

(訳)海もひとつに見える  澄んだ月の光。

2809

   庭上冬菊

霜おかぬ南のうみのはまびさし ひさしくのこる秋のしらぎく (2809)

(訳)霜が降りない南の海の浜辺の家の庇。秋の白菊が久しく残っていることだ。

2810

   暁聞竹風

あけぬるか竹のは風のふしながら まづこのきみのちよぞきこゆる (2810)

(訳)夜が明けたのか。竹の?

2811

   那智

   深山風

風のおともただ世のつねにふかばこそ み山いでてのかたみにもせめ (2811)

(訳)風の音も

2812

   瀧間月

やはらぐるひかりそふらしたきのいとの よるとも見えずやどる月かげ (2812)

(訳)和らげる光が降らした滝の糸。夜とも思えない。月の光が宿って。

2813

   寺落葉

てらふかきもみぢの色にあとたえて から紅をはらふこがらし (2813)

(訳)寺は深い紅葉の色の中に消えて、 濃い紅色の落ち葉を木枯が払う。

2814

   本宮にて、又講ぜられ侍し、遠近落葉 

こけむしろみどりにかふるからにしき ひとはのこさぬをちのこがらし (2814)

(訳)一面に生えた苔に濃い紅色の落ち葉ががかぶる。彼方の木枯は一葉も残さず葉を吹き払う。

2815

   暮聞河波

もろ人の心のそこもにごらじな ゆふべにすめる河波のこゑ (2815)

(訳)人の心の底も濁るまいよ。夕べに澄んだ川の波の音。

2816

   道のほどの哥 山路月

袖の霜にかげうちはらふみ山地も まだすゑとほきゆふづくよ哉 (2816)

(訳)袖の霜? まだ先が遠い夕月夜であることだ。

2817

  暁初雪

冬もけさことしの雪をいそぎけり よをこめてたつみねのあけくれ (2817)

(訳)冬も今日、今年の雪を急いだのだなあ。

2818

   深山紅葉

み山地はもみぢもふかき心あれや あらしのよそにみゆきまちける (2818)

(訳)み山は紅葉が深く色づいている。嵐にも深い心があるのだろうか。深山の紅葉が御幸を待っていることだ。

2819

   海辺冬月

くもりなきはまのまさごにきみがよの かずさへ見ゆる冬の月かげ (2819)

(訳)曇ることなく澄んだ冬の月の光。その光に照らされてはっきりと見えている(吹上浜の)細かな砂(の粒の数の多さ)に、あなた様の齢〔よわい〕の数までもが見えるようです。(後鳥羽上皇様、どうかお健やかにご長寿でお過ごしくださいませ。)

※ この歌の口語訳については、もりのうさぎさんにご教示いただきました。ありがとうございます。

2820

   河辺落葉

そめし秋おくれぬとたれかいはた河 またなみこゆる山ひめのそで (2820)

(訳紅葉に染まった秋を終わったと誰が言ったのだろうか。石田川の波の上を過ぎて流れていく落葉が山姫の着物の袖のようだ。

2821

   旅宿冬月 

いは浪のひびきはいそぐたびのいほを しづかにすぐる冬の月かげ (2821)

(訳)岩に打ち寄せる波の響きは急ぐ旅の庵に静かに過ぎる。冬の月明かり。

2822

   羇中霰

冬の日をあられふりはへあさたてば 浪に浪こすさのの松風 (2822)

(訳)波に波越す佐野の松風。

2823

   夕神楽

神がきやけふのそらさへゆふかけて みむろの山のさか木はのこゑ (2823)

(訳)山の榊の葉の音。

(てつ)

2009.2.24 UP
2020.4.20 更新

参考文献