み熊野ねっと 熊野の深みへ

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都々逸「三千世界」

幕末の志士・高杉晋作の作といわれる都々逸

 幕末の志士・高杉晋作の作といわれる都々逸(どどいつ)。
 遊女から客に向けての言葉か、あるいは逆に客から遊女への言葉なのか。いずれにしても遊郭での遊女と客の関係が前提にある唄です。

三千世界の烏を殺し 主(ぬし)と朝寝がしてみたい

(訳)たくさんの男たちに「本命はあなたですよ」と熊野の護符・熊野牛王(くまのごおう)に誓約を書いて渡している。あなたと朝遅くまで寝てみたいが、そうすると熊野の神様との誓約をたくさん破ることになる。誓約を破れれば熊野の神様の使いであるカラスがたくさん死ぬことになる。この世のすべてのカラスを殺してでもあなたと朝遅くまでと寝てみたい。

 「朝寝」を「添い寝」と歌うこともあります。


都々逸:三千世界 京都龍馬会主催 寺子屋龍馬 伝統芸能邦楽科 新内枝幸太夫

熊野牛王

熊野牛王
熊野那智大社の熊野牛王

 牛王は寺社が発行するお札、護符。牛王は護符としてだけでなく、裏面に誓約文を書いて誓約の相手に渡す誓紙としても使われてきました。牛王によって誓約するということは、神にかけて誓うということであり、もしその誓いを破るようなことがあれば、たちまち神罰を被るとされていました。

 熊野の神様は正直を尊ぶ神様であり、嘘をついた者を罰する神様でした。熊野の神様への誓約を破ると、熊野の神のお使いであるカラスが三羽亡くなり、誓約を破った本人は血を吐いて地獄に堕ちるとされていました。

 様々な寺社から発行されていた牛王のなかで最も神聖視されていたのが熊野の牛王であり、戦国時代の武将間の盟約の誓約書には熊野牛王が使われました。それが江戸時代になるともっと軽いものになり、遊女が多くの客たちと取り交わす誓約書にまで熊野牛王が使われるようになりました。

(てつ)

2021.5.30 UP

参考文献