もと熊野本宮の末社、平忠度を祀る境内社あり
甲明神社は熊野本宮の末社でした。
周囲は若い杉の人工林ですが、境内にはスギの大木が数本とイチイガシの大木が1本生えていて、とくに鳥居横の杉が存在感があります。
石段の横に丸石。正面には境内社の石祠と丸石。
社殿回りには白い浜石が敷き詰められています。
説明板が2枚。
村社 甲明神社
御祭神 伊弉册尊(いざなぎのみこと)
速玉之男命(はやたまのおのみこと)
事解之男命(ことさかのおのみこと)
菊理姫命(くくりひめのみこと)
泉守道命(よもつちもりのみこと)境内神社 若宮 薩摩守平忠度 明治十一年八月合併許可
山ノ神 大山津見神 明治十一年二月合併許可
神明神 天照皇大神 西方一段下に巨石上に石祠あり由緒 不詳なり
もう1枚の説明板。
熊野川町指定文化財
相須甲明神社の大杉相須宮井小船の3ヶ村はもとは川合村といいました。この甲明神社は川合村の産土神です。川合の地は熊野川と北山川の合流点に位置し水上交通の要衝の地として開け発展した所と言えます。
神社名の「かぶと」から連想してある程度の武力を持った者が居住していたのでしょう。この下手の小高い山頂には砦跡らしきものが残存します。残念ながら確たる記録も伝承も残っていません。
この大杉やいちいがしはこの里でのそれらの栄枯盛衰をつぶさに見ていたことでしょう。巨木に話を聞くすべはないものでしょうか。いつまでもすくすくとますます大きく成長することを願ってやみません。
熊野川町教育委員会
『紀伊続風土記』の相須村の条には以下のようにあります(口語訳てつ)。
○甲明神社 境内周180間 禁殺生
甲明神・若宮 相殿(表行1丈)
村中にある。本宮の末社である。小船村・宮井村・相須村の3ヶ村の氏神である。
また『日本歴史地名大系31 和歌山県の地名』(平凡社)の「東牟婁郡 相須村」の項には以下のようにあります(696頁より引用)。
甲明神社は熊野本宮の末社で、小船(現三重県南牟婁郡紀和町)・宮井・相須 三ヵ村の氏神とされ、『新宮領分見聞記』には神楽堂をもつ拝殿や籠所があり、神主・神子各1人で、『正月元旦御戸開、同四日けちのとう弓あり。十一月二日祭』と記す。
3社ある境内社のうちの2社。向かって右の石祠が若宮。左の丸石が山ノ神。
若宮。御祭神は薩摩守平忠度。
甲明神社の熊野川対岸の少し下流、和歌山県新宮市熊野川町の音川(おとがわ)という地区が平忠度の生誕の地だと伝わります。
山ノ神。スギの大木の根元に丸石が置かれています。御祭神は大山津見神。この写真には写っていませんが、スギの大木の向かって左隣にはイチイガシの大木があります。
もうひとつの境内社、神明神は少し離れた所にあります。御祭神は天照皇大神。
(てつ)
2012.8.25 UP
2020.3.17 更新
参考文献
- 『紀伊続風土記 (第1-5輯)』臨川書店
- 『日本歴史地名大系 31 和歌山県の地名 』平凡社
甲明神社へ
アクセス:JR新宮駅から車で約40分
駐車場:駐車スペースあり