只今わが国に熊楠のもっとも不平なるは、何にかに貴族などいうことを尚ぶ風のもっぱら行なわるるなり
只今わが国に熊楠のもっとも不平なるは、何にかに貴族などいうことを尚ぶ風のもっぱら行なわるるなり。なにとぞ陛下は至尊なれば言わず、その億万劫の末までも転輪されんことを望むの外なし。その他のものどもは一に平らげてしまいたきことに御座候。
ー 土宜法龍宛書簡『南方熊楠全集』7巻
南方熊楠が当時の日本で最も不満だったこと。それは、貴族というものを貴ぶしきたりが何かにつけて絶えず行われることでした。
生まれによって人生が決まる社会構造を、熊楠は嫌悪しました。天皇陛下を除いて、その他の人々はすべて平等な社会を、熊楠は望みました。
現在の日本でも貴族制度的なものはまだ残っています。「世襲議員」などはその一例でしょう。このような政治の仕組みは、熊楠が最も不満だった「貴族を尚ぶ風」そのものに違いありません。
(てつ)
2025.7.17 UP
参考文献
- 『南方熊楠全集』7巻、平凡社
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