■ 熊野の説話 |
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◆ 芸道に執心する父子 |
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建長六年(1254)成立の橘成季(たちばなのなりすえ)編著の説話集『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』にこんな話があります(巻第十五 宿執第二十三 四九七)。
法深房(藤原孝時。孝道の子。孝道は琵琶の名手で、木工権頭として琵琶の製作にも長じていた)は二十歳の年から熊野へ詣でて、「我が芸がもし父の芸に及ばなければ、ただちに命を召しあげてください」と申された。祈請の旨が神慮にかなって、琵琶の道における第一人者となった。 口うるさい性分から言ったのではあるまいが、嫡女(孝道の孫)が七歳の年にあまりに稽古を怠けて走り遊ぶのを懲らしめようと思って、嫡女に稽古用に持たせていた小ぶりの琵琶を取り上げて、「もう怠けることを仕事にして、琵琶など忘れてしまいなさい」と言って、しばらく隠していたのを、幼心にひどく嘆いて、乳母に何かというと悲しみを訴えて謝ったけれども、それでも許さない。 このようなころに母が賀茂へ詣でたが、この少女を連れて行った。下向の後、「ところで賀茂ではどんなことを申し上げたの?」と問われて、「ただ琵琶を弾かせてくださいと申し上げました」と答えた。 先祖代々ある技能を習い伝える家柄の人はあわれに不思議なことだ。七歳で道に執心する心があるというのはあわれなことである。 仏教は何かに執着しがちな自分の心から自由になることを目指していますが、熊野の神様は芸道の神様でもあるのですね。 (てつ) 2005.8.19 UP ◆ 参考文献
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