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◆ 平野俊『渡ー熊野よ順風に帆を揚げろ』文芸社


レビュアー:山濱さん(2005.2.8 UP)

 よく、「○○の場所に対する著者の深い愛情が伝わってくる」などの書評が書かれることがあるが、それを伝えるためには、著者のたぐいまれな表現力と構成力が必要になると思われる。
 この本の作者、平野俊さんはまさに前者のみならず、たぐいまれな文章力によって熊野の魅力を書きつづっている。冒頭の文章は車窓から新宮にいたる風景を見事に表現しており、誰もがその風景を体験してみたいと思わせる切り口である。
 そこから新宮〜本宮〜那智についてのさまざまな事跡を紹介しながら、地元の人との交流も鮮やかに描いている。

 なんといっても、本の3分の2を占めている那智にまつわる話、それは、那智の滝補陀落渡海、沖縄に流れ着いた日秀上人の話などであるが、ぐいぐい読み手を引っ張って行くものがあり、あっというまに読み終えてしまった。

 この本にどういう形で熊野が登場するかと言うより、全編が熊野についての本であり、時には出羽三山の話であったり、沖縄であったり、八重山諸島であったりしても、その根本にはどっしりと熊野が鎮座している。

 さらに、この本を魅力的にしているのは、葛城山〜水越峠〜金剛山〜千早を約2時間半で、月山八合目〜頂上を1日に3往復してしまう筆者の抜群の踏破力でもあるかもしれないし、巻末に掲げられた参考文献の多さに代表される緻密な調査に基づくリアリティなのかもしれない。
 単にガイドブック的にかかれた本とはひと味違う熊野が見えてくると思う。

 装丁は群青色の地に緑の帯である。黒潮の青であり、深い熊野の森の色である。
 本自体が熊野であるように思えてくる。

 

渡―熊野よ順風に帆を揚げろ
渡―熊野よ順風に帆を揚げろ平野 俊


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