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★ いた


 「いた」とは熊野の巫女のこと。

 熊野では巫女のことをイタと呼びましたが、熊野の神はイタを通して託宣を下しました。
 イタは神憑かりして神の言葉を伝えます。

 藤原摂関家出身の僧・慈円の歴史書『愚管抄』巻第四には、白河上皇の熊野御幸の折に「ヨカノイタ」という名の知れたイタが神懸かりして白河上皇に託宣を下したことが書かれています。

 保元の乱を描く軍記物語『保元物語』では、鳥羽上皇熊野御幸の折に「イワカノ板」という名の熊野山内無双の巫女が、鳥羽上皇の崩御とその後の混乱を預言します。

 源氏・平家の盛衰興亡を描く軍記物語『源平盛衰記』には、「夕霧の板」という名の熊野山上無双の巫女が登場します。

 能の「巻絹」では、シテ(主役)が熊野本宮の巫女で、彼女は神憑かりして神の言葉を伝えます。

 

 また、熊野山内の巫女だけでなく、熊野を詣でる女性参詣者も自らを「イタ」と名のりました。
 詳しくは「熊野を知るためのキーワード/むしたれいた」で。

 熊野信仰の隆盛にとって女性宗教者が果たした役割は大きなものでした。

(てつ)

2008.2.18 UP

 ◆ 参考文献

山本ひろ子『変成譜―中世神仏習合の世界』春秋社

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